スピリット・オヴ・サマー
 その言葉に、憲治は戸惑う。
 「憧子」の言葉によれば、自分はまだ夢を捨てていない人間であるらしい。だが実感はない。
 沈黙した憲治を助けるように、千佳子は優しく微笑む。そして、
「大丈夫。今日の憲治君は、私の知ってる憲治君そのものだったから。きっとまた、みんなを、あっと言わせるような『夢』、見つけられるよ。まだ、大丈夫」。
 千佳子の優しさに、憲治は涙腺が緩むのを鼻の頭を掻きながらごまかした。
 千佳子がまた切り出す。
「もし、もし、仮に、よ…。」
< 270 / 422 >

この作品をシェア

pagetop