スピリット・オヴ・サマー
 周りの意見に耳も貸さず、ただ自分の意地を通して作り上げた全翼機。墜落し、大破した機体の前で立ちつくしたあの日。友人の笑い声の中、「飛ぶわけぁねぇなぁ」と一緒に笑った。本当は、悲しかった。
 熱い心を持つことを軽蔑する憲治の心は、その時から影を落とし始めていた。何事も平均点であることをヨシとする浮き世に迎合できない自分が、周囲から異端扱いを受けることを、最も恐れていた。そのため、魂を焦がす生き方を侮蔑することで、自分が異端でないことを社会に示そうとしていたのである。
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