スピリット・オヴ・サマー
「そ、聞きたいこと、あったんだ。それで来た。」
 憧子の横顔を夏風の粒子が撫でていくのが見える。少し寂しげに微笑みながら憧子は言った。
「おらど会えば寿命縮むって言ったべェ?んで、命粗末にしてまで何聞ぎに来たなだァ。」
「…千佳子と、会ったろ?」
 憲治が言うと、憧子は小さく「うん」とうなづいたまま、腰を下ろした土手の青草に指を絡めて俯いた。憧子の様子に別段、影の見当たらないことを確かめてから、憲治は続けた。
「『憧子』のままで?」
「そう、この恰好。なして(何で)?」
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