スピリット・オヴ・サマー
 そして憲治の足下に歩み寄り、しゃがみこんで憲治の顔を見上げる憧子。
「だども、それはヒトとして生ぎで行ぐためには、どうしても必要な『ゆらぎ』なんだァ。『ゆらぎ』があればこそ、機械でもねぇ、ケダモノでもねぇ、中途半端で暖かい生き物でいられる。ヒトとして、生ぎで行ける…。その『ゆらぎ』を生むのが『夢』。寝てみる夢、起きてみる夢、どっちも同じだァ。」
 憲治は視線を降ろす。自分を見上げる憧子の瞳。
「『夢』は、ねなだが?」
 憧子の問いに、憲治はすぐには答えられなかった。
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