スピリット・オヴ・サマー

　憲治は自分でも驚くほど落ち着いていた。声は上擦るでも、籠もるでもなく、心に描く言葉が自然に流れ出す。「風」の様に。
「互いの思い込みだった、かも知れない。憧子が俺に全てを許そうとしたのも、中学生ならではの背伸びだった、かも知れない。でもな、それでも、俺は嬉しかった。」
　そして少し照れながら、微笑み交じりのため息と共に憲治の告白が静かに転がった。
「ここのところずっと、へらへらしてるか苛ついてるかしかなかったんだ。お前はそんな俺をな、思い切り泣かせてくれた。正直言うと俺、人前で、しかも女の子の前でこんなに思い切り何度も泣いたの、初めてだ。」