スピリット・オヴ・サマー
 憲治は、返事の様なそうでない様な、えらく間の抜けた声を出した。そして振り返ると、そこに声の主。
「よーくおざったぁ(よくいらっしゃいました)。」
 ひどく故い歓迎の言葉を、その少女はごく自然に使った。「少女」は机に腰掛けて、生意気な微笑みを浮かべている。そして、少し上目に憲治を見つめながら、
「20歳過ぎででプータロでぇ、んが(自分)の始末もつけられねぇでだば、どぉこ大人だでが(何処が大人だって)?」
と、その美しい顔に似合わない憎まれ口を叩いた。
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