スピリット・オヴ・サマー
憲治は黙った。聖菜の言葉も途切れた。テレビから延々と高校野球の声援が垂れ流されている。
蕎麦が運ばれてくるまでの間、二人は一言も言葉を交わさなかった。聖菜がどう思っていたかは図りかねたが、少なくとも憲治には空気の重さが心に痛かった。
やがて、二人分の「天ざる」が飯台に運ばれ、憲治が、いただきますと一礼して蕎麦の中に箸を刺し入れようとしたその先を、聖菜の言葉が遮った。
「恋は、しなかったんですか?」
生暖かい、それでいて胸中をえぐる響きがあった。
蕎麦が運ばれてくるまでの間、二人は一言も言葉を交わさなかった。聖菜がどう思っていたかは図りかねたが、少なくとも憲治には空気の重さが心に痛かった。
やがて、二人分の「天ざる」が飯台に運ばれ、憲治が、いただきますと一礼して蕎麦の中に箸を刺し入れようとしたその先を、聖菜の言葉が遮った。
「恋は、しなかったんですか?」
生暖かい、それでいて胸中をえぐる響きがあった。