スピリット・オヴ・サマー
蕎麦の中に箸を突き刺したまま憲治の動きが止まる。憲治は言葉を選んだ。選んだ、と言うよりは、その一言を使うべきかどうかを考えていた、と言うほうが正しい。そして、「仕方なく」その言葉を使った。
「しなかった。」
そして間を開けず、できなかった、と言い直した。
「…そう、ですか。」
聖菜の短い答えを憲治は俯きながら聞いた。その短い答えの中に、しかし、その答えの重さに憲治は再び言葉を凍らせた。
食事中、二人は言葉を交わさなかった。さっさと食べ終えてしまった憲治にとっては、沈黙の重さだけが苦く感じられていた。
「しなかった。」
そして間を開けず、できなかった、と言い直した。
「…そう、ですか。」
聖菜の短い答えを憲治は俯きながら聞いた。その短い答えの中に、しかし、その答えの重さに憲治は再び言葉を凍らせた。
食事中、二人は言葉を交わさなかった。さっさと食べ終えてしまった憲治にとっては、沈黙の重さだけが苦く感じられていた。