スピリット・オヴ・サマー
「分かったよ、憧子。そう言うことなんだな。」
 憲治の言葉に、憧子は少しだけ顔を上げ、虚ろに目蓋を開けた。そして、こくん、とうなづいた。憲治は続けた。
「だとしたら、もう、お前とは会わない。」
 憧子の返事はなかった。
「俺は現実の中で生きるしかないから。」
 憧子が深く目を閉じた。そして、ぼそぼそっと言った。
「…んだ。まだ今だば間に合う。聖菜を助けられるのは、もう憲治さんしかいねぇべな。聖菜も『アッチ側』に行きかげでる。『コッチ側』に呼び戻せるのは、たぶん…。」
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