だるま
住宅地といっても、今は午前二時だ。
明かりのついている家はどこにもなかった。
104、184、110、893、119、109。
どっちだ、どれだ。
何でこんなややこしい数字ばかり世の中にあふれているんだ。
ボンネットがベコリと音をたてた。
ヒビの入ったガラス越しに見ると、男が斜めに傾いた状態で、変な風に立っている。
自力で立てる、ということはわりと平気なのかもしれない。
大丈夫かも。この人死なないかも。
「いま、救急車呼びますから」
危ないからその辺に座っているように伝え、再び携帯を握りなおす。
いつの間にか喉のつっかえもとれて、ガラスのヒビ、ボンネットのへこみ具合に絶望する余裕さえ生まれた。
男は足を止めなかった。
不自然な体勢のままこちらに向かってくる。