だるま


土下座から面をあげたそのままに、男は斜めに傾きながらも、お互いなんとか正座して向かい合う。

満点の星が輝く空の下、むせかえる草のかおりに包まれて、お互いの名刺を交換した。

天野忠一、肩書きは証券会社の統括マネージメントなんとか。

反応に困るくらいそういった表沙汰な職業について無知な私だったので、とりあえず曖昧に笑ってごまかした。


きっとエリート街道を突き進んできただろう天野忠一は、私の名刺を穴があくほど見ながら困り顔で首を捻っている。

田中好子。
風俗ルポライター。


「風俗っていうのは、あの、ナマハゲとかですか。すいませんよく知らないもので」


天野忠一は居たたまれないくらいに丁寧に微笑んで見せた。



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