森林浴―或る弟の手記―
その日の朝食は覚えてはいません。
恐らく、いつもと変わらない、焼き魚とかであったのでしょうか。
突然、飯を鼻に近付けた佐保里姉さんが茶碗を落としたのです。
がしゃん、という音を立てて割れた茶碗。
絨毯に散らばる白米。
私たちはその様子に驚きました。
佐保里姉さんは病弱な振りはしていたものの、本来は頗る健康な身体だったのです。
なのに、そんな佐保里姉さんが吐き気を催した様子なのに、私たちは目を丸くしました。
佐保里姉さんは居間を出ようとしたものの、間に合わずその場に嘔吐しました。
ですが、早朝です。
胃の中は空に近かったらしく、大した吐瀉物は出ず、胃液だけが薔薇色の唇から垂れていました。
苦しそうに何度も咳き込む姿を見た母があからさまに顔を歪めたのを今でもよく覚えています。