森林浴―或る弟の手記―
六冊目
そして、幸せな年月は経っていきました。
わが社は順調に成長を告げ、国内でも有名な会社へとなりました。
大きな屋敷も購入し、沢山の使用人も雇い、その中で私たち家族は暮らしていました。
戦後から、私のように一代で会社を大きくしたものは大勢いました。
厳密に言えば、元は嘉一さんの興した会社なので、私一人の力とは言い難いでしょう。
ですが、ここまでにしたのは紛れもなく私です。
戦後の貧しかった暮らしが嘘のようでした。
そして、幼い頃よりも裕福な生活でした。
私はいつも、ここまで私についてきてくれた幸乃たち家族に感謝していました。
皆がいたから、私は頑張ってこれたのです。