森林浴―或る弟の手記―
佐保里姉さんは取り敢えず、ということで自室のベッドに寝かされました。
私は居間の外に出されてしまい、中では両親と香保里姉さんが何かを話していました。
扉に耳をつけて盗み聞きを試みたものの、ひそひそと話す声はちっとも聞き取れませんでした。
私は直ぐ様諦め、佐保里姉さんの部屋へと向かいました。
廊下にいても仕方無いし、自室に籠るのは台風が恐ろしくて無理だったからです。
私が静かにノックをすると、「修一郎さんね?」と返されました。
私はそれにも驚きました。
佐保里姉さんはいつも私のことを「修ちゃん」と呼んでいたからです。
「入って」
佐保里姉さんの声も、いつもとは違いました。
上手く表現は出来ないのですが、兎に角違っていたのだけはよく覚えています。
私は佐保里姉さんに言われた通りに部屋の中に入りました。