森林浴―或る弟の手記―
烏滸がましい話、私も嘉一さんの下で働いていた時は、何度か女性従業員に誘われたり、仕事先の女性に手紙を渡されたことはあります。
ですが、それは修介とは比べ物にもなりません。
それくらい、修介には女性が寄ってきました。
ですが当の本人は勉強に差し支えるといって、女性と交際はしていませんでした。
それでも、女性たちは諦めず、大学に入ってからも、同じようなことは続きました。
修介はそれらの全てを丁重に断っていました。
そんな様子を見ていた正世が「勿体無い」と言っていたのを覚えています。
無論、そんな正世にも男からの誘いはありました。
私は父として不安でなりませんでしたが、正世はしっかりとした娘で、口ではそんなことを言っていても、簡単に男と付き合ったりはしませんでした。
私はそれに安堵していました。