森林浴―或る弟の手記―
修介と正世は非行の道に走ることもなく、真っ直ぐに育っておりました。
そして、その油断がいけなかったのでしょうか。
ある頃から、修介に女の影を感じ始めたのです。
修介だって、二十歳を過ぎた年頃の青年です。
それまでは女性に興味がなくとも、心惹かれる女性が現れても何ら不思議はありません。
私が幸乃に惹かれたのはもう少し若い頃でした。
ですが、あきらかに修介の様子がおかしいのです。
普通に清らかな交際で、相手も女子大生とかであるなら、私たちに隠す必要はないのです。
ですが、修介は交際している女性の存在を私たちに隠していました。
友人と食事をしてくると言って出掛けては、微かに香水の匂いを漂わせて帰ってくるのです。
深夜に小声で電話をしている時もありました。