森林浴―或る弟の手記―
私はある日の休日、出掛けようとする修介に声を掛けました。
「最近よく出掛けるが、恋人でも出来たのか?」
私はそう尋ねました。
そう訊くのがいっぱいいっぱいでした。
すると、修介は一瞬、怖がるかのような表情を見せました。
ですが、すぐ笑顔になり、首を横に振ったのです。
「そんな人いませんよ」
そう言われてしまっては、他に訊く術はありません。
私は「そうか」とだけ返しました。
修介は「いってきます」と言い、屋敷を出ました。
その夜のことです。