森林浴―或る弟の手記―
それはもう、我が家の一大事というくらいに、私たちは困りました。
子供に何かを訊く時の術が分からないのです。
私は十代半ばから親のいない生活を送っていましたし、幸乃も幼くして遊郭に送られています。
佐保里姉さんはさして親との関わりがありませんでした。
私たち三人は、ろくに親というものを知らなかったのです。
そんな三人はいい歳をして迷ってしまっていましたし、修介の身に何が起きているのかも分かっていませんでした。
悩んでいる時間は長く感じましたが、実際は一週間程度でした。
朝起きると、修介が居間の絨毯に正座していました。
背筋をぴんと伸ばし、居間に入る私を真っ直ぐに見詰めてきました。