森林浴―或る弟の手記―




修介はぽつりぽつりと、彼女との出会いについて語りました。


彼女との出会いは、大学のOBに誘われた飲み会だったそうです。


二次会と称し連れていかれた店に、彼女はいたそうです。


そのOBとは、その日初めて会ったそうで、気付けばその場にいたそうです。


彼女はその店で一番美しかったそうです。


歳こそ若くないものの、外見は去ることながら、内面からも美しさが滲み出ていたそうです。


一目惚れではない、と修介は言っておりました。


その夜は彼女とは一言二言しか言葉を交わさなかったそうです。


その後も、そのOBに誘われる度に、店でなくとも、彼女がいたそうです。


彼は、彼女が修介を気に入っている、と言っていたそうですが、修介はそのようには感じなかったそうです。


OBがどうにか二人をくっつけようと画策しているのは明らかだったようですが、いつしか彼女に会えるのが楽しみになっていた、と修介は言っていました。


その瞳は輝いていたのを、よく覚えています。




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