森林浴―或る弟の手記―
そして私は忘れていたのです。
幸せで穏やかな時間があまりに長く続いたからでしょうか。
それとも、今までの出来事は私にとっては、さしての悲劇でもなかったからでしょうか。
不幸に見舞われたのは、佐保里姉さんでり、私ではなかったからです。
だから、すっかり危惧することなどなかったのです。
そう、佐保里姉さんの幸せと、残酷な出来事はいつも一緒なのです。
こんなことを忘れるくらい、私は幸せな気持ちで胸を満たしていたのです。