森林浴―或る弟の手記―
当日、私は更に落ち着きを失いました。
何を着るべきか。
このネクタイでおかしくないか。
やはり、こちらの背広のほうがいいのではないか。
私は何度も幸乃に確認を取りました。
幸乃は呆れた笑いを浮かべながら、大丈夫ですよ、と繰り返していました。
ですが、私は何度も鏡の前でおかしいところはないかを見ました。
結局、完璧に納得することは出来ずに、少々妥協した格好になりました。
格好など重要ではない、と自分に言い聞かせました。