森林浴―或る弟の手記―
七冊目
一時間もしないうちに、庭に車が到着する音が耳に届きました。
帰ってきた。
そう思うと、緊張感が更に増します。
私は数度咳払いをして気を落ち着かせました。
大きく深呼吸をしたその時、居間の扉はがちゃり、と開きました。
「ただいま戻りました」
修介のよく通る声が居間に響きます。
この日は、家族全員が揃っていました。
そして、皆、修介の恋人を目にするのを楽しみにしていたのです。
「こちらへ」
修介は自分の背後にいた女性を、中に入るように促しました。
その仕草一つで、修介が彼女をどれだけ大切に思っている、よく分かりました。
彼女は顔を伏せた状態で今まで足を踏み入れました。