森林浴―或る弟の手記―




もし自分が幸乃と兄妹であると明かされたら。



私はそう想像してみたが、うまく出来きませんでした。


それもそのはず。


私の身に起きたことではないのですから、想像出来るわけがないのです。


なのでこの時、私には二人の受けた衝撃がどれ程のものだったのかははかり知れません。


私はそういうことだから、お腹にいる子供は諦めて欲しい、と二人に言いました。


真っ先に異論を唱えたのは修介です。


修介は真実を知っても早苗への気持ちは変わらない、と言い切りました。


それが本心なのか、まだ状況を整理出来ないだけなのかは分かりませんでした。


ですが、私としては産むことを認めるわけにはいきませんでした。


強い理由なんてありません。


道徳的なこととしてです。




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