森林浴―或る弟の手記―
私には二人の姉がいます。
佐保里姉さんとその双子の香保里姉さん。
香保里姉さんの存在など、私は今の今まですっかり忘れていました。
私がまだ十の頃に嫁いでいった香保里姉さん。
ですがその後、彼女とは一度も会っていません。
戦乱の中、手紙一つ寄越さず、両親の葬式にも顔を出さなかった姉を常に覚えていろというのは土台無理な話です。
例えそれが佐保里姉さんの片割れであっても。
なので、私はこの時、酷く久し振りに香保里姉さんのことを思い出しました。
それはうんと昔の記憶です。