森林浴―或る弟の手記―
既に堕胎が出来ない状況であると知り、私は酷く落胆しました。
兎に角、金にものを言わせて堕胎させるか。
それとも、取り敢えず産ませ、その後、施設に出すか里親を探すか。
私は必死に悩みました。
そして、早苗を追うことなど、すっかり忘れていたのです。
修介も私と睨み合ったまま動きませんでした。
余程、意思を貫きたかったのか、それとも意地になっていたのか。
その判断はつきませんが、早苗の後を追うことはしませんでした。
早苗の後を追ったのは佐保里姉さんと幸乃でした。
そして、直ぐに悲鳴が聞こえてきたのです。
それが、佐保里姉さんのものであったのか、幸乃のものであったのかは分かりません。
私は何が起きたのかは分からないが、取り敢えず正世にはここを動かないように言いました。
正世が頷くのを見て、私は悲鳴がしたほうへと走り出しました。
修介は私より先に居間を出ていました。