森林浴―或る弟の手記―


悲鳴がしたのは台所で、そこを視界に入れた瞬間、私は昔の出来事を思い出しました。


嘉一さんの事務所です。


それを連想させたのは真っ赤な血でした。


佐保里姉さんは力なくだれる早苗の身体を抱いていました。


早苗の喉元から血が垂れていて、その日佐保里姉さんが着ていた真っ白のブラウスは赤く染まっていました。


私は慌てて救急車を呼びました。


早苗は台所にあった包丁で喉を切ったのです。


弟と関係を持ってしまったことは、彼女にとってそれほどまでにショックな出来事だったのでしょう。



私は震える声で救急車を呼び、台所に戻りました。


まだ早苗には息があったようで、何か呟いていました。





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