森林浴―或る弟の手記―
八冊目
早苗は運ばれた病院で静かに息を引き取りました。
ですが、七ヶ月を過ぎていた胎児は無事に取り出されました。
早苗と修介、どちらにもよく似た、愛らしい男の子。
身体の不具合は得になく、小さいながら健康な赤ん坊でした。
私と幸乃はよく話し合い、養子としてその子供を育てることにしました。
生まれてきた子供に何の罪もありません。
子供は宗一郎、と名付けました。
早苗の死に、修介と佐保里姉さんは脱力していて、とてもこの決定を伝えることは出来ませんでした。
二人とも自室に籠ってしまい、早苗の葬儀にも顔を出しませんでした。
早苗の葬儀は、私が縁者として送り出しました。
最期くらい、可愛い姪に何かをしてあげたかったのです。