森林浴―或る弟の手記―
例え、早苗と佐保里姉さんを引き離すまではしても、そのままにしておいて欲しかったのです。
そうすれば、早苗は早苗で、それなりに幸せな人生を全う出来たでしょう。
決して、あんな惨劇が起きることはなかったのです。
そして、佐保里姉さんがようやく落ち着きを取り戻し、再び平穏が訪れたその時に、修介を轢き殺した。
これは、香保里自らの手で行ったそうです。
私は、修介が殺されたと聞いて、真っ先に香保里の顔が浮かびました。
そして、警察に通報するよりも先に、彼女の元へ向かったのです。
彼女は未だ嫁ぎ先の家で裕福な暮らしをしていました。
ですが、旦那との間に子供はなく、その旦那は外に愛人を囲っていたのです。
その事実が、更に佐保里姉さんへの妬みを増幅させたのでしょう。
そう、何故佐保里姉さんを追い詰めるのか尋ねた私に香保里が返してきた言葉は「妬み」でした。
ただ、それだけなのです。