森林浴―或る弟の手記―
自分より美しく、それでいて尚更出来の良かった佐保里姉さん。
そして、自分は殺人犯の娘で、醜い。
たったそれだけの理由でした。
全ての間違いは、私の両親が香保里を養子としたことでしょう。
ですが、そんなことを責めても仕方無いのです。
全ては、香保里が引き起こしたことなのですから。
私はこの手で香保里を殺してやろうかと思いました。
でも、私には家族があります。
幸乃に正世、佐保里姉さん、そして幼い宗一郎。
私がこの女を殺してしまったら、全てを犠牲にしてしまう。
私はそう思い止まりました。
こんな女の為に、大切な家族を犠牲にするわけにはいかないのです。
ですが、憎しみは消えることはありません。