森林浴―或る弟の手記―
私の忠告通り、香保里が私たちの生活に介入してくることはありませんでした。
私はようやく、ここからが新しい始まりになる。
そう思っていました。
佐保里姉さんもすっかり、元には戻れぬようになってはいましたが、不幸はもう訪れないのです。
佐保里姉さんが望んだように、森林浴をして暮らしていけるのです。
それが何よりだと思っていました。
ですが、そんな矢先、佐保里姉さんが自ら命を経ちました。
理由は分かりません。
誰も、もう何年も佐保里姉さんの声を聞いていなかったのですから。
でも、不思議と私の胸に悲しみは広がりませんでした。