森林浴―或る弟の手記―




私の忠告通り、香保里が私たちの生活に介入してくることはありませんでした。


私はようやく、ここからが新しい始まりになる。


そう思っていました。


佐保里姉さんもすっかり、元には戻れぬようになってはいましたが、不幸はもう訪れないのです。


佐保里姉さんが望んだように、森林浴をして暮らしていけるのです。


それが何よりだと思っていました。



ですが、そんな矢先、佐保里姉さんが自ら命を経ちました。


理由は分かりません。


誰も、もう何年も佐保里姉さんの声を聞いていなかったのですから。


でも、不思議と私の胸に悲しみは広がりませんでした。



< 186 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop