森林浴―或る弟の手記―
ある事件は起きました。


私はその日、仕事を終え、帰路につきました。


車の中で資料を眺めていました。


老眼もかなり進み、細かい字は夜になると殆ど見えません。


そろそろ引退を考える頃だな、と思いました。


宗一郎も直、大学を卒業します。


それと同時に会社を託すべきだな、と思いながら、資料を仕舞っていました。


宗一郎は既に私の仕事を手伝っていましたし、会社を任せるには十分な能力がありました。


そして家の前に着いたら時です。


門の前に佇む青年の姿が目に入りました。


宗一郎です。


こんな時間にどうしたというのでしょう。


私は車を下りるなり、宗一郎に近付きました。



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