森林浴―或る弟の手記―
私が声をかけると、宗一郎は瞳を揺らしました。
そして、こう言ったのです。
「あの女を轢き殺した」と。
私はあの女が誰か直ぐに分かりませんでした。
すると、宗一郎は声高らかに笑い始めました。
そして、その名前を口にしたのです。
「香保里を殺した」
宗一郎はそう言って、大きな声で笑いました。
私はその瞬間、宗一郎を褒め称えてやりたくなりました。
そんなことを考える私も相当な狂者なのかもしれませんね。