森林浴―或る弟の手記―
香保里姉さんは不細工な外見をものとも思わせぬ程、気立ての良い、穏やかな女性でした。
そのせいか、屋敷の使用人たちは皆、香保里姉さんを慕っていたのです。
香保里姉さんもそれに応えるかのように、使用人たちと楽しく会話をし、時には彼等の仕事を手伝ってもいました。
香保里姉さんは見た目は少々アレではあるが、嫁ぎ先は幾らでもあるだろう、というのが、私たち家族や使用人の考えでした。
それに反し、佐保里姉さんは、全く中身のないような女性でした。
使用人たちには気位高く振舞い、自分とは住む世界が違うとばかりに蔑視していて、私たち家族には甘えた素振りを見せるのです。
ですが、どれも本来の性格のようには思えませんでした。
読書や生け花、茶道といった趣むことは何一つせず、いつも屋敷の裏にある小さな森にいたのです。
木々に囲まれ、その隙間から陽の光を浴びる姿は、弟の私でも息を飲む程の美しさでありました。