森林浴―或る弟の手記―
血の繋がった姉をそう呼ばれることに腹が立ったのか。
それとも、佐保里姉さんだったから腹が立ったのか。
それはその頃の私には分かりませんでした。
「修ちゃん」
森で本を読んでいると、佐保里姉さんに名を呼ばれました。
堕胎をされた翌日から、佐保里姉さんはまた私を「修ちゃん」と呼ぶようになりました。
私の傍らには庭師の青年がいます。
彼は佐保里姉さんを見ると、直ぐに目を伏せました。
恐らく、佐保里姉さんのあまりの美しさに照れていたのでしょう。