森林浴―或る弟の手記―




それから三月後、香保里姉さんは女学校の卒業を待たずに嫁いでいきました。


白無垢に身を包んだ香保里姉さんは、それでもお世辞にも美しいとは言えませんでした。


ですが、家の中の誰もが香保里姉さんの結婚を祝福していました。


いえ、全員ではありません。


佐保里姉さんだけは違うように見えました。


佐保里姉さんは婚礼の儀にも参加せず、その日も家に籠っていたのです。


ですが、父と母はそれにほっとしているようにも見えました。


香保里姉さんの亭主になる人は好青年といった風貌をしていて、並ぶと香保里姉さんが更に醜く見えました。


ですが、香保里姉さんは幸せいっぱいの表情を浮かべていたのです。


いくら勉学が好きな香保里姉さんでも、女の一番の勤めは結婚と子を成すことだと分かっていたのでしょう。


弟としては、香保里姉さんが幸せになることは喜ばしいことでありました。


世間では、日本が真珠湾を攻撃したと騒がれていた十二月のことでございました。




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