森林浴―或る弟の手記―
そんな佐保里姉さんは家の敷地から外に出ることはまずありませんでした。
香保里姉さんは先駆者的な思想を持つ人で、女学校に通い、大學に進むことも視野に入れているようでした。
佐保里姉さんは昔から肺の調子が悪いだ、頭が重いだ、何だかんだと理由をつけ、学校を休みがちで、いつしかいかなくなり、それと同時に、表へも出なくなりました。
気が向いた時には、「体調が良い」と言い、屋敷の裏手の森に足を運ぶ。
そんな生活は、佐保里姉さんが十七になる歳まで続きました。
私はその時、まだ十歳の子供でした。