森林浴―或る弟の手記―
その言葉を聞いて、前任の庭師の男を思い出ししました。
あの、中年の男です。
それと同時に、佐保里姉さんの妊娠の相手があの男だったことにも気付いてしまったのです。
あの薄汚い男が佐保里姉さんの柔らかい肌に触れたのかと思うと、急激におぞましく思えました。
何の経緯があってそうなったのかまでは分かりません。
ですが、あの男と佐保里姉さんは男女の仲だったのです。
釣り合わないなどという問題ではありません。
あのような男が佐保里姉さんを慕うなどという時点でお門違いもいいところなのです。
私自身当時は気付いていませんでしたが、私は佐保里姉さんに懐いていたのです。
よく分からない不思議な魅力を持っていてのか、中身がないから惹かれるのかは分かりません。
ですが、佐保里姉さんは私にとって、家族の中でも特別な存在であったことは間違いまりません。