森林浴―或る弟の手記―
佐保里姉さんが森に行く回数が増えたのは、気にかけずとも明らかなことでした。
そして、森に足を運ぶと、決まって一刻以上の時間戻ってこないのです。
ですが、変わり者の姉。
その行動を気にする者は誰一人として、屋敷の中にはいませんでした。
いえ、香保里姉さんだけは違いました。
彼女は佐保里姉さんが森で興味を持てるようなものを見付けたのだと、喜んでいたのです。
勉学に秀でた香保里姉さんから見たら、そうも思えたし、何事にも興味を抱かない片割れが心配でもあったのでしょう。
ですが、私の幼心はそうは捉えませんでした。