森林浴―或る弟の手記―




戦争が終わるまで後一年余り。


そんなことを知っているものは誰もおりませんでした。


この頃は私でさえも、戦争に怯えて暮らしていたのです。


父と母が無事なことは、母から送られてくる手紙で知っておりました。


ですが、近くで起こる空襲。


怖くないわけがありません。


このまま戦争が続いたら、日本の人口は消滅してしまうのではないだろうか。


そう思えてなりませんでした。


疎開先は運よく、空襲に遭うことはありませんでした。


ですが、上空を飛ぶ爆撃機は恐ろしいものでした。


一月に元八王子、二月に加住村、四月に立川と由井村北野、七月に原国民学校から疎開していた少年が戦闘機からの銃撃を受け死亡。


立て続けに戦争の被害が起きておりました。


私はそんな話を聞く度、佐保里姉さんが心配でなりませんでした。


小さな赤ん坊を抱えて逃げることが出来るのか。


兎に角、沢山の心配をしました。


そして、また、佐保里姉さんの上に悲劇が起きたのです。




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