森林浴―或る弟の手記―
私はひたすら、佐保里姉さんからの手紙を待ちました。
無事を報せる手紙をです。
佐保里姉さんと早苗の安否が気になり、夜も眠れない日が続きました。
長崎や広島に原爆が落とされたことよりも、佐保里姉さんのことが気掛かりだったのです。
この時、その近辺に家族がいた者は誰でもそうだったでしょう。
そんな中、戦争は終わりました。
短いような、長いような戦争は、八月十四日に日本がポツダム宣言を受諾し、十五日に玉音放送で、国民に終戦が告げられました。
日本全国で、幾らの人が死んだでしょう。
幾らの人が負傷したでしょう。
幾らの人が家族や家を失ったでしょう。
幾らの人が、心を傷付けられたでしょう。
終戦は本当に呆気ないものでした。
そして、様々な傷痕を残しました。
戦争が終われば全て終わりだったわけではないのです。