森林浴―或る弟の手記―
まず、敗戦後の日本は酷く貧しいものでした。
軍事勢力に国の金を使ったからでしょう。
そして、男手の不足。
私は何とか徴兵は免れましたが、世間の殆どの男が戦争へと駆り出されていました。
志願して戦地に赴いた人など、戦争が始まって間もない頃だけです。
家に戻っても、近所は女性ばかりでした。
戦争に行った家族を待ちながら暮らす人々の顔に生気などありません。
家族を失い、職を失いながらも生きていかなくてはならない。
それが、戦後の日本でした。