森林浴―或る弟の手記―
暇を潰しに行っている。
私は漠然とではありますが、そう思っていたのでございます。
佐保里姉さんが、何をして暇を潰しているかまでは、勿論想像もつきません。
ですが、香保里姉さんの見解も強ち外れではなかったと知ったのは、四月後のことでした。
ここからは少し、私の幼少期について記させて頂きます。
私は華族、紫野家の長男として生まれました。
優しく温かさを持った母と、厳格ながらも我が子を愛する父。
そして、二人の姉に囲まれて過ごしました。
裕福な暮らし、広い屋敷、多数の使用人。
私の幼少期はなに不自由ない生活と言えたでしょう。