森林浴―或る弟の手記―




佐保里姉さんの安否はいつまでも分かりませんでした。


実家に手紙が届くこともありません。


私は届くかは分からないが、何通も佐保里姉さんへ手紙を書きました。


どうか無事なら返事をくれ。


幾度もそう書きましたが、佐保里姉さんからの返事はありませんでした。


佐保里姉さんの安否を両親に尋ねることは憚られました。


それに、訊いたところで、知らないだろうとも思いました。


両親の口から、香保里姉さんの名前は出ても、佐保里姉さんの名前が出ることはなかったからです。


我が家は少ない財産を削りながら、生活していました。


ですが、ある時から、金が送られてくるようになったのです。


毎月、本当に少しの金額ではありますが、郵便受けに入っていました。


送り主は分かりません。



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