森林浴―或る弟の手記―
日々の生活と、これからのことを考えるだけで、いっぱいだったのです。
過去を振り返る余裕など、少しもありませんでした。
気付けば、嘉一さんも瞳に涙を浮かべていました。
そして、優しい声で「うちに来ないか」と言ってくれました。
嘉一さんはうちを解雇された後、造園の会社を自分で興し、それが軌道に乗っているとのことでした。
職人を増やそうと思っていたこと、大きくはないが家も買ったこと。
だから、私に自分の家に来るように勧めてくれたのです。
私はその温かい言葉が嬉しくて、更に涙を溢しました。
そして、嘉一さんの家に住むことになったのです。