森林浴―或る弟の手記―
両親も香保里姉さんも、唯一の男子である私をとても可愛がってくれて、それは溺愛とも呼べるものでした。
ですが、厳しくするところは厳しく躾られ、自分でいうのもなんですが、私は何処に出しても恥ずかしくない少年に育ちました。
そんな私を佐保里姉さんだけは、違う目で見てきたのです。
どうにも、家族を見る目ではありません。
まるで、小動物でも構うかのような感じでした。
何故そう思うのかというと、まずは口調です。
私が物心つく以前ならいざ知らず、七歳を過ぎてもまだ、「どうちたの?」などと、赤ん坊言葉を使ってくるのです。
私が成長するにつれ、次第に減ってはいきましたが、それでもたまにはそのような言葉を使うのです。
私はそれが嫌で堪りませんでした。
可愛がられていることは百も承知でしたが、何か違うと思わずにはいられなかったのです。