森林浴―或る弟の手記―




嘉一さんは奥様とは仕事先の方の紹介で知り合ったと言っていました。


確かに、奥様のことは愛しているし、奥様のお腹の中にいる子供を愛しくも思うと言っていました。


ですが、生涯自分の胸を締め付けるのは佐保里姉さんであり、今も恋焦がれるのも佐保里姉さんだそうです。


嘉一さんは死ぬ時まで、そう思っていたのでしょう。


奥様はそのことに、当時は気付いてはおりませんでした。


毎日、幸せそうに、膨らんだお腹を撫でていました。


その姿は、佐保里姉さんが妊娠した時を思い出すものでした。


私はいつも、佐保里姉さんが今、どのように暮らしているのか気になっていました。



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