森林浴―或る弟の手記―




何もかもが幸せで、上手くいくし、これからも全てが幸せだと思っていました。


佐保里姉さんも私も、幸乃も。


新たな命も。


今までの不幸を取り戻すくらいに幸せになろう。


そう決めていました。


そんな矢先、母が亡くなりました。


進行していた病で死んだのではなく、自殺でした。


原因は分かりません。


病室の窓から飛び降りた母の遺体は顔がぐちゃぐちゃになっていました。


精神に異常をきたしていた母は、嘉一さんの勧めで個室でした。


なので、母が飛び降りた時のことを見ていた者は誰もいませんでした。


私は薄情なのでしょうか。


母の死に、涙一つ出ませんでした。


それどころか、ようやく肩の荷が下りたような気持ちにさえなったのです。


疎開してからずっと、ろくに母の存在を必要としていなかったし、父が自殺をしてから、母が私の母ではなくなったからでしょう。


ですが、佐保里姉さんは違いました。




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