森林浴―或る弟の手記―




佐保里姉さんは母の亡骸にすがり付き、大声で泣きました。


その姿はまるで、幼い子供のようでした。


私が見ていた限り、佐保里が母に愛されていた様子はありませんでした。


それより、あまりの奇行故にか、邪険な扱いさえ受けていたようにも思えました。


私は、佐保里姉さんも人の親で、その有り難みが分かるのだろう、と思いました。


母の葬儀は全て嘉一さんが行ってくれました。


昔世話になったのだから、これくらいはさせて欲しい。


嘉一さんのその言葉に私は甘えました。


子供の出産には金がかかる。


そんな時に、母の葬儀代はかなりの負担になるからです。


私が何処までも薄情だったのも、あの人のせいなのです。


母は何も悪くありませんでした。


私は全てを知った今、母の墓前に手を合わせ続けています。




< 75 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop