森林浴―或る弟の手記―
佐保里姉さんは母の亡骸にすがり付き、大声で泣きました。
その姿はまるで、幼い子供のようでした。
私が見ていた限り、佐保里が母に愛されていた様子はありませんでした。
それより、あまりの奇行故にか、邪険な扱いさえ受けていたようにも思えました。
私は、佐保里姉さんも人の親で、その有り難みが分かるのだろう、と思いました。
母の葬儀は全て嘉一さんが行ってくれました。
昔世話になったのだから、これくらいはさせて欲しい。
嘉一さんのその言葉に私は甘えました。
子供の出産には金がかかる。
そんな時に、母の葬儀代はかなりの負担になるからです。
私が何処までも薄情だったのも、あの人のせいなのです。
母は何も悪くありませんでした。
私は全てを知った今、母の墓前に手を合わせ続けています。