森林浴―或る弟の手記―
佐保里姉さんも心の何処かで嘉一さんを愛し続けていたのでしょう。
たった一瞬の心の通わせだけで、互いを想い続けた二人。
私は佐保里姉さんのことも、嘉一さんのことも大好きでしたので、出来れば二人で幸せになって欲しいと思わずにはいられませんでした。
例え、嘉一さんに奥様と子供がいても。
「今度こそ、一緒になりましょう。
俺は何もかも捨てます」
嘉一さんの言葉に、私が嬉しくなりました。
佐保里姉さんと再び離れてしまうのは寂しくもありますが、それで佐保里姉さんが幸せになれるなら。
そう思いました。
嘉一さんが佐保里姉さんと駆け落ちをする以上、私も仕事を失うでしょう。
それでも構わない、とさえ思いました。
幸乃は、そんな私についてくる、といってくれるという自信もありました。