森林浴―或る弟の手記―
姉の話に戻します。
姉は私にだけ心を許しているようにも思えました。
いつも私にだけ、お菓子をくれたり、私にだけ、秘密の話をしてくれていたりしました。
秘密の話というのは、恐らく佐保里姉さんの妄想だったと思われます。
それは、佐保里姉さんは外に出ないので、用意に想像がつくのです。
それに、佐保里姉さんが話す事柄はあまりにも突飛だったのです。
海で人魚を見たが、それは童話のように美しいものではなく、酷く醜かっただとか、
秘密の花園には醜い妖精が無数にいるだとか、
そういった話で、全ての話に醜い生物が出てくるのです。
私はそれらの話を聞きながら、佐保里姉さんは香保里姉さんが憎いのだろうかと思っていました。
非の打ち所のない容姿をした自分とは正反対の香保里姉さん。
だが、周りに愛されているのはそんな香保里姉さんの方なのです。